ポーン全体の形のことをポーンストラクチャーと言います。 戦略を考える上でポーンストラクチャーが関わってくるため、ポーンストラクチャーについて学び、ポーンストラクチャーから戦略を立てられるようになりましょう。
ポーンストラクチャーは通常のチェスならば定跡によってパターンがありますし、Chess960 なら 「 ポーンストラクチャーに影響すること 」 で述べたように、駒の初配置からどのようなポーンストラクチャーになるかある程度分かります。
相手より好形のポーンストラクチャーになることが望ましいですが、相手の指し方によって臨機応変に対応していかねばなりません。
どのようなポーンストラクチャーにするかを考える時、様々な要素が関係してきますが
基本としては
センターを支配する
ピースが展開しやすいようにする
キングの安全性を考える
スペースを得る
弱いポーン、弱いマス、ができることを避ける
まずはこの5つを考えるといいでしょう。始めはそれらを全部考えるのは難しいかも知れませんが、慣れてくれば自然に意識できるようになるでしょう。
ポーンストラクチャーの特徴をとらえ、ポーンストラクチャーに応じた戦略を
立てられるようにすること
ポーンストラクチャーから戦略を考える場合、ポーンストラクチャーのみで考える場合と
他の様々な要素を考慮に入れて総合的に考える場合、があります。
チェスを始めてしばらくは、マイナーピースを展開させて、キャスリングを済ませた後
さてこれからどうすればいいだろう? と思うことがあると思います。そのような時に
ポーンストラクチャーが戦略を考えるヒントとなります。上図はピースを除いた局面です。
ミドルゲームに入るあたりから、ピースが全てなくなった場合、エンドゲームはどうなるか? といったことを考えるのが1つの戦略になります。すなわちキングとポーンだけになった場合を考えます。
上図からどのようなアイデアが浮かびますか? もしくは気づくことは何でしょう?
ご自分で少し考えられてから下記に進んでください。
白
h サイドでスペースを得ているので h サイドで攻めるのが1つのアイデア
Backward f4 ポーンが弱く見える
e5 を支配しているが、黒も e5 を支配している
黒に e4 を支配されているので d3 としたいが、そうすると白の f と e ポーンが弱くなる
キング周辺のポーンが白マスにあるため、キング周辺は黒マスに弱い
pawn break h2 → h4 → h5 。 e2 → e4 とするのは f4 ポーンが弱くなる
ポーンストラクチャーを見て、どこで pawn break が起こるか確認することも大事です。pawn break は自分のポーンを相手のポーンにぶつけてファイルを開こうとすることです。pawn break からハーフオープンファイルやオープンファイルができたりしますが、pawn break の影響を考え、良いタイミングで pawn break を行いましょう。
黒
h サイドは黒マスに弱い
e4 支配が効果的
キング周辺のポーンは動いておらずキングの安全性が高い
pawn break h7 → h6、 e7 → e5
Hole h6、 e6
続いてピースを加えた状況で考えてみましょう。
12.Bf2 の局面
RB65240 vs. GM LuckyTiger 0-1
ピースがあると複雑に見えますが、先ほどのようにポーンだけになった場合を考えておくのと、実際にピースがある状況で考えられることは何でしょうか? 黒はどちらにもキャスリング可能な状態です。
少しご自分で考えられてから下記をご覧ください。
白
h サイドでスペースを得ているが、h サイドで攻める準備ができてない
好位置にある Nd4 を追い払いたいが e3 とすれば Bf2 の展開を妨げ、BxNd4 とするのも良いとは言えない
Nd3 が活用されてない → 活用させたい
a4 ポーンを進めることを考えられるが、効果的とは言えない
Bh8 と同一ライン上にある Kg2 を移動させたい
Ra1 も Bh8 の攻撃を受ける可能性があるので要警戒
黒
e7 → e5 の pwan break 後、fxe5 dxe5 となれば ハーフオープン d ファイルを活用する
a サイドキャスリングしてルークを連結させる
とりあえず私はこのようなことを考えました。皆さんはどうでしょうか?
上図局面からの続きは下記リンク先をご覧ください ( 12.Bf2 から )
次の例を見ていきましょう。
黒先手の局面
ポーンストラクチャーから気づくことは何でしょうか? 何か戦略を思いつくでしょうか? ご自分で考えられてから下記をご覧ください。考えの正否は別として、考えることが自分で戦略を考える練習になります。
白
ハーフオープン d ファイルを活用する
Backward f3 ポーンが弱い → e4 ポーンも弱くなる
...fxg3 とされると f3 ポーンが弱くなるので gxf4 または g4 としたい
gxf4 とすると h2 ポーンが孤立ポーンになる
g4 とすると e3 のマスが黒にとって活用しやすくなる
Hole e3、 h3、 ( f3 のマスも弱い )
b3 とすると a3 と c3 ポーンの守りが外れ、キング周辺の守りが弱くなる
b3 としたら Kb2 として a3 と c3 ポーンを守る
...fxg3 の後、ハーフオープン f ファイルを活用し Backward f3 ポーンを攻める
...fxg3 の後、h ファイルにパスポーンを作る ( 将来的に )
pawn break d7 → d5
...d6 とすると d5 のマスを白が活用しやすくなる
白の弱いマス e3、 h3 にピースを運び活用する
12.dxc3 の局面
GM LuvkyTiger vs. wondering0 1-0
黒が Bad Bishop と Nc3 を交換して、白にダブルポーンを作らせたところです。ピースがあるとピースに気をとらわれやすくなるので、先ほどのようにポーンだけで考えるということも大事です。両者とも初手からルーク、キングは動いてません。
少し難しく感じるかもしれませんが、戦略を考える前に何に気づくかが大事です。
気づいたことがアイデアやプランにつながり、それが戦略につながります。戦略を考える練習だと思って、気づいたことやアイデアをご自分で出されたら、下記をご覧ください。
白
a サイドキャスリング ( 0-0-0 ) して ハーフオープン d ファイルを活用する
Bxc6 dxc6 の交換は黒に都合が良さそう
0-0-0 した後 黒に Qf7 → Qa2 を狙われた場合、b3 から Kb2 とする
a2-g8 ラインに弱い
...h5、 Nf2 fxg3、 hxg3、 Qxf3 で f3 ポーンを失う
または ...h5、 Nf2 fxg3、 Nd3 gxh2 でポーン1つ損
ビショップペアの利点
黒
すぐ ...fxg3 だと hxg3 から Nh2 で f3 ポーンを取れないので、...h5、 Nf2 fxg3、 hxg3 Qxf3
f3 ポーンを取った後、オープン f ファイルの活用
f3 ポーンを取った後、ピース交換して単純化
エンドゲームで h ポーンがパスポーンとして利点になりそう
Ng6 の位置が悪い。 ...Nge7 とすることが可能。
....Nge7 の後 Bxc6 とされたら ...Nxc6
g1-a7 ラインに弱い
pawn break d7 → d5 Bxc6 の可能性があるうちは d7 → d5 とはしない
a2 - g8 ラインの活用
a サイドキャスリング ( 0-0-0 ) することになりそうだが Bxc6、Bxa7 に注意
上図局面後は f3 ポーンを取れる黒が有利ですが、その後 白の指し手が良く
exchange up ( マイナーピースとルーク交換 ) して形勢逆転します。パスポーンの Blockade ( ピースでパスポーン前進をブロック ) が上手いです。
続きは下記リンク先にて ( 12.dxc3 からご覧ください )
ポーンストラクチャーについて2つの事例のみ記載しました。実際には様々なポーンストラクチャーがありますが、ポーンストラクチャーからどのようなことを考えるか参考になりましたら幸いです。またご自分でポーンストラクチャーから戦略を考えられるようになりましょう。考えるのに時間がかかったとしても、時間をかけて考えたことは無駄にはならないでしょう。
英語ページですが通常のチェスでどのようなポーンストラクチャーがあるかは下記ページが参考になります。
中級者の方向きですが
チェス戦略大全 II ポーンの指し方とセンター
ルディック ・ パッハマン 著 ( 小笠 誠一 訳 )
の和書はポーンとポーンストラクチャーの勉強になります。
洋書ならば同じく中級者向きですが
Understanding Pawn Play in Chess - Drazen Marovic
Pawn Structure Chess - Andrew Soltis
がオススメです。
マスターのゲームを見ることはいろんな勉強になりますが、ポーンストラクチャーに注目して見るのも勉強になります。
自分のゲームを見直しする時、相手と自分のポーンストラクチャーを比較して、ポーンストラクチャーがゲームにどのような影響を与えているか注目して見るのもいいです。
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