ナイト3


N vs. B のエンドゲーム

ポーンが多く残った状態でマイナーピースが N vs. B になるエンドゲームがあります。オープンな局面であればビショップ側が有利となる場合もありますが、ナイト側が相手のビショップと異色のマスにポーンを置くと、ビショップはポーンを攻められなくなり、ポーンを攻められるナイト側が有利になるケースがあります。

比較的 多く起こるエンドゲームですので、参考例を見ながら要点を覚え、ご自分のゲームでお試しください。

20.Kg2 の局面


hitsujyun vs. Myrimorphic 1-0

駒の数は同数ですが、黒は N と B、 白は 2N です。センターに2つのオープンファイルがあり、オープンな局面ですので、ビショップを活用しやすいでしょう。すでにエンドゲームと言えますので、ここからどのようにしていくかを考えることは Endgame Strategy となります。戦略を学び始めた段階では急いで学ぶ必要はありませんが、駒数が多く残っているエンドゲームで、どのように戦略を考えていくか、Endgame Strategy 関連の本で学ばれるといいでしょう。

上図の局面でビショップを活用できれば全く問題ないですが、ピース交換が行われ、黒側にビショップが残り、白側に1つのナイトが残った場合、ビショップ側が不利になる可能性があるため、黒は駒交換に注意が必要です。

20...Ne5 21.Nxe5 Bxe5 22.Nc4 Bc7 23.Re7 Rd7 24.Rxd7 Kxd7 下図




N vs. B の状況になりました。白としてはなるべく白マスにポーンを配置すれば、ポーンをビショップに攻撃されなくなります。ただし、ビショップに攻撃されなくても黒キングにポーンを攻撃されることはあるので注意が必要です。

オープンな局面のため、ビショップは両サイドに対応しやすいのが利点です。
25.Ne3 Ke6 26.c4 Be5 27.b3 下図




a サイドでビショップは白のポーンを攻められなくなりました。Fritz13 の分析を見ると、この時点では黒が若干いいようです。

黒としてはポーン交換を進めて、ビショップが活用されるようにしたいですが、不要にポーンを動かして弱いポーンを作ってしまい、ナイトに弱いポーンを攻撃されることを注意しなければなりません。また、チャンスがあり、問題なければビショップとナイトの交換もありえます。

27...a6 28.f3 b5 29.h4 bxc4 30.Nxc4 下図




白は2つの孤立ポーンができましたが、白 c4 ポーンがなくなったため、...Kd5 → ...Kd4 が可能となりました。


30...Bc7 31.g4 Kd5


両サイドに対応できるビショップを温存。

エンドゲームで大事なことの1つはキングを活用することです。そしてキングをセンターに向かわせることが良い場合が多いです。キングがセンターにあればどちらのサイドにも向かいやすいですし、好位置を占めることで有利を得られます。

白キングはセンターに向かうのが遅れたため、黒キングの a サイド進入を許してしまいます。32.Kf2 Kd4 33.Ke2 Kc3 34.h5 a5 35.Ne3 下図




35.Nd2 より 35.Ne3 の方がいいようです。



35...Kb2


36.Kd3 や 36.Nd5 が良いですが、白は 36.Nf5? としました。
36.Nf5 g6 37.hxg6 hxg6 38.Ne7 下図




ここで 38...Kxa2 とすれば b3 ポーンも取れる黒が優勢でした、しかし白は 38...g5 としました。38...g5 39.Nd5 Be5 4.Kd3 Kxa2 41.Kc4 Bd4 下図




Fritz13 の分析を見ると黒有利です。白キングが b3 ポーンの守りにしばらているうちに、黒キングは h サイドのポーンを取りに行けます。白は Nd5 → Ne7 → Nc6 で a5 ポーンを狙えます。 Nc7 → Ne6 とする方が良いようですが。



42.Ne7 Kb2 43.Nc6 Kc2?


43...Bc3 としていれば a5 ポーンを守れました。持ち時間5分 1手ごと2秒追加の
短時間ゲームだったので、良い手を見落としやすいです。 44.Nxa5 で互角になります。

44.Nxa5 Kd2 45.Nc6 Ke3 46.b4 下図




短時間のゲームでは判断の難しい局面でしょう。 46...Be5?? とすれば 47.Nxe5 fxe5 48.cxc5 で白が勝てます ( 黒としては 47...cxb4 48.Nd7 Kxf3 49.Nxf6 となる方が
良い )。

46...cxb4 とすると 47.Nxd4 とされますが、黒がドローにするには 46...cxb4! 47.Nxd4 b3 とするしかありません。 ゲームでは 46...Kxf3?? となりました。

46...Kxf3?? 47.Nxd4 Kxg4 48.bxc5 f5 49.c6 下図



最終局面


ここで黒リザイン。このゲームではオープンな局面だったため、途中までビショップ側が有利でしたが、ポーンがお互い 7個ある時など、局面がオープンでない時は、ナイト側が有利になることが多いです。



22.Ne3 の局面


Trinidad84 vs. hitsujyun 1-0

エンドゲームに入る手前といったところでしょうか。エンドゲーム関連の本などを見ていると、このようにエンドゲームに向かう局面からすでにエンドゲームと見なしていることもあります。エンドゲームを見据えた戦略があるからでしょうか。

この局面から気づくことはいろいろありますが、ここでは的をしぼります。 白の Good Bishop に対して黒は Bad Bishop です。黒は Bad Bishop が残るとエンドゲームで不利となりそうなので、Bad Bishop が残るエンドゲームをできれば避けたいです。
a サイドにある白側のポーンは黒マスにあるため、黒側の白マスビショップでは攻撃できません。



22...Ne4?


よく考えず指してしまった手。 23.Bxe4 で黒はナイトがなくなると、Bad Bishop が残り、N vs. B のエンドゲームになった場合不利となる可能性が高いです。


27...Bxe8


メジャーピース交換が行われ、 N vs. B のエンドゲームとなりました。 Fritz13 の分析を見ると白が良いようです。白は h サイドのポーンを黒マスに置けば、ビショップに攻撃されませんし、ナイトも黒マスにあればビショップから攻撃を受けません。

白は h サイドの Pawn Majority からパスポーンを作れる可能性がありますが、黒は a サイドで Pawn Majority があってもパスポーンを作りづらいです。

お互いキングをセンターに向かわせ活用するのはもちろんのこと、白はキングと協力してナイトで黒のポーンを攻めること、黒はポーン交換を行なって局面をよりオープンにしたいところですが防戦になりそうです。
28.Kf1 Bc6 29.g3 Kf7 30.Ke2 Kf6 31.Ke3 a5? 下図




白に 32.Kd4 を許します。 黒は 31...Bd7 32.g4 h6 などとするべきでした。



32.Kd4 h5?!


32...b6 とすべきでした。


33.h4 g5??


黒の悪手が続きます。 33...b6 とすべきで、黒は適切な対応 ・ 防御ができてません。



34.hxg5+ Kxg5 35.Ne3


白は d5 ポーンを取ることができます。ただし、d5 ポーンを取ってナイトとビショップ交換となった後、 Kg5 → Kg4 → Kf3 で h サイドのポーンを狙われることに気をつけなければなりません。 36.Nxd5 Bxd5 37.Kxd5 Kg4 38.Ke4 とできるので白優勢、というより上記局面ですでに白優勢です。



35...h4?


36.gxh4+ または 36.f4+ のどちらでも白が勝てるでしょう。



45.Kxc4


黒のポーンがなくなった局面。黒は白の2つのポーンを取れればドローにできますが
ナイトと f4 ポーンが同色マスにあり、利きのバリアを形成しているため、黒キングは f4 ポーンを取りに行くのに手数がかかるのと、f4 ポーンを取りに行けば b4 ポーンの昇格を防ぐのにビショップを失います。黒キングが b ポーンの昇格を防ぎに行こうとすれば、白は f ポーンを進めてきます。 



52.Kxb7


黒はリザインしなかったのでゲームはもう少し続きましたが、白が勝てる局面です。

2つの参考例のみでしたが、 大事なのは N vs. Bのエンドゲームになってから考えるのではなく、 N vs. B のエンドゲームに持ち込んだ方がいいか、持ち込むべきではないか、事前に考えてからエンドゲームに進むことです。

望まなくても N vs. B のエンドゲームになったならば、自分がどちら側でもどうすべきかを良く考え、臨機応変に対応していきましょう。ゲームの見直しをする時、自分で考えるのはもちろんですが、チェスソフトの分析を見ると改善につながります。


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