ポーン交換


戦略でポーンに関連したことは、戦略例の スペース から Blockade まで扱いました。
今回はポーン交換がそれらの戦略とどのような関わりがあるか考えていきます。

オープニングでは、センターを支配したり、ピース展開できるようにポーンを前進させます。センター支配の攻防から早期にポーン交換となる場合があります。

1.e4 e6 2.d4 d5


黒は 2...d5 で e4 ポーンを攻撃し、白がどう対応するか迫ります。
ポーンがお互い取れる状態になった時、どのような選択肢があるか、最善手は何か? 考えるようにしましょう。


3.exd5


1. 自分からポーンを取る
この場合、黒は 3...exd5 、3...Qxd5 、3手目ではポーンを取り返さない、という選択があります。白が 3.exd5 とする場合、黒がどう応じてくるかを考える必要があるのに加え、3.exd5 でポーン交換するとどのような影響があるかを考える必要もあります。 Tactics に関連したポーン交換もありますが、ポーン交換が戦略的にどのような影響を与えるか考るようにしましょう

3.exd5 exd5 では e ファイルがオープンファイルとなるため、オープン e ファイルを活用することが考えられます。 e6 ポーンがなくなり、黒は Bc8 を展開しやすくなります。 

3.exd5 Qxd5 では、4.Nc3 でクイーンをセンターの好位置から追いやろうとしても 4...Bb4 とすることができます。このような展開に白が慣れてなければ、対応に戸惑うことでしょう。ただし、e6 にポーンが残っているため、黒は Bc8 の展開をどうすべきか考えねばなりません。 
3...Qxd5 とすると、 d と e ファイルがハーフオープンファイルとなるので、白なら e ファイル、黒なら d ファイルを活用することを考えるでしょう。

3手目でポーンを取り返さないのはギャンビットになり、この局面では有効ではないですが 3...Nf6 4.dxe6 Bxe6 など考えられます。 白の a サイド Pawn Majority が利点となり、白は単純化していけば良いので、黒は苦しい戦いとなります。


3.e5


2. ポーンを前進させる
ポーン交換が可能な状態の時、ポーンを取ることと、ポーンを他の駒で守ることは大抵考えますが、ポーンを前進させることを見落とすことがあります。特に、相手の応じ手を読む時、相手がポーンを前進させてくることを見落としやすいので気をつけましょう

3.e5 でポーン交換を避けた場合、どんな影響が出ているでしょうか?
e5 ポーンが d6 と f6 を支配しているため、白 e5 ポーンがある限り、黒は d6 と f6 にピースを運べません。
白は h サイドでスペースを得ているため、h サイドで攻めることが考えられます。

5th ランクにポーンが進んで白有利な感じに見えますが、黒は 3...c5 でポーンチェーン ( 斜めにつながったポーン ) の根本を攻撃し、e5 ポーンを守っている d4 ポーンを弱体化させようとします。
場合によって黒は ...f6 で e5 ポーンを攻撃することもあります。 exf6 Nxf6 となれば、ポーン交換を利用してナイトを展開できますし、ハーフオープンファイルとなった 
f ファイルを活用できます。
...f6 として、白が exf6 としてこなければ、黒から ...fxe5、dxe5 とすると、白 e5 ポーンを弱くさせることもできます。この場合、黒 e6 ポーンが Backward Pawn になりますが、白 e5 ポーンがあるため、ルークからは攻撃を受けません ( エンドゲームで弱点となる可能性はある )。

黒は a サイドの方でスペースを得やすいので、黒は a サイドで攻めて来ることが考えられます。


3.Nc3


3. テンションを保つ

始めはすぐポーンを交換したり、ポーンを前進させたりして、テンションを解放してしまうことが多いかも知れませんが、どちらからもポーンを取れる状態を保っておくことが良い場合も多いです。

テンションを解放しない方が良い場合
相手から先にポーンを取らせた方が都合がいい場合
適切なタイミングでテンションを解放したい時
テンションを解放することで相手にプレッシャーがなくなる時
など

テンションを保つのに 3.Nd2 とする手も良いです。一方、3.Bd3 は良くなく、3.f3? は悪手となります。3.Bd3 や 3.f3 が何故良くないのか、考えてみてください。

3.Nc3 と 3.Nd2 では 3...dxe4 となった時、4.Nxe4 でナイトを好位置へ展開できます。
3.Nc3 Bb4 に対しては 4.e5 で問題ありません。
3.Nc3 Nf6 4.e5
3.Nd2 Nf6 4.e5
3.Nd2 c5 4.exd5
など

それらは通常のチェスで定跡ですが、今ここで重視しておきたいのは、テンションを保つこと、テンションを解放すること、でどういう影響が出てくるか?、ということをどんな局面であっても自分で考えることです。定跡だけに頼ってしまうと、そういうことを考えなくなってしまいます。

ここまでの内容で、単なるポーン交換においても様々なことが考えられることが分かりました。始めは難しく感じるかもしれませんが、慣れてくれば戦略的なことを考える面白さを感じるようになってくるでしょう^^


オープニングにおけるポーン交換

ハーフオープンファイルまたはオープンファイルを作り、活用する
ポーン交換を利用してピースを展開させる
ギャンビット
相手に弱いポーンを作らせる
相手に弱いマスを作らせる
Pawn Majority を作る
など


ミドルゲームにおけるポーン交換

もしくはミドルゲーム入る手前あたりから、ポーンストラクチャー の記事で扱った
Pawn Break によりポーン交換が起こることがあります。
パスポーンを作る
弱いポーンを交換して解消させる
など


エンドゲームにおけるポーン交換

相手にパスポーンを作られて不利となることを特に気をつけましょう
自分がパスポーンを作り有利を得ることももちろん考えます
ポーン交換から自分側に弱いポーンを作ってしまったり、相手キングに進入されてしまう進入路を作ってしまうことにも気をつけましょう


ポーンはチェスの魂 」 と言われるように、ポーンに関連することは多く、奥深いです。

ポーン交換がゲームの中でどのような影響を与えているか、自分のゲーム見直しの時や、マスターのゲームを見て注目してみてください。


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